【INTERVIEW】iTunes Store「R&B/ソウル」チャートで国内2位を獲得 FAREWELL, MY L.u.v&プロデューサー 前編

 FAREWELL, MY L.u.v(通称:フェアラブ)は、名古屋を中心に活動するダンス&ボーカルグループ。昨年6月には、90’sR&Bを基調とし、HIPHOP発生以降のソウルのテイストを一層強めた1stEP「DONT TOUCH MY RADIO」をリリース。耳の早い音楽ファンの間で話題となった。

 そんな彼女たちが、10月28日に待望の2ndEP「GOLD」をリリースした。前作に引き続き、メインコンポーザーに嵐や鈴木愛理らに楽曲を提供する渡辺泰司を迎え、レゲエスペシャリストである森俊也(KODAMA AND THE DUB STATION BAND、Matt Sounds、Rocking Time)、元Instant Cytronの松尾宗能など、多彩な制作陣が参加している。本格的なR&B、ラヴァーズロックレゲエ、ファンクといった音楽性の楽曲を、テイストを薄めることなくポップスへと落とし込むことに挑戦した、珠玉の7曲を収めた作品だ。リリースの翌日には、iTunes Storeの「R&B/ソウル」チャートで日本国内のランキング2位を獲得するなど、既に高い注目を浴びている。

 今回は、そんなフェアラブのプロデュース及び運営を行っている、小林拓馬へのインタビューを中心としつつ、メンバーの児玉律子と、サポートメンバーのもりきこまる(a.k.a. タイロン・ウッズ)の2名も同席。グループのことや、新作「GOLD」のことなどについて、話を聞いた。
 
 

取材、構成:岡島紳士
撮影:YOSUKE L.u.v KOSHINO

 
 
 
小林「音楽的に今、一番自由にできるジャンルってアイドルじゃないかな」


── 基本的なことからお聞きしたいと思うんですが、グループ結成をしたきっかけを教えて貰えますか?

小林拓馬(以下、小林) 2013年に本業の広告などのグラフィック系のデザイナーをやりながら「アイドルバンチ」というライブイベントを地元の名古屋で始めました。アイドルがブームになり、アイドルの既成概念みたいな物が変わってきてちょっと面白いと感じはじめ、自分でもアイドルイベントをやってみたいと思ったのがきっかけです。そうした中、いわゆる楽曲の質の高さが魅力の“楽曲派”と呼ばれるアイドルさんをイベントにお呼びした時に、対バン相手として名古屋にマッチングするアイドルさんがいないことに気づきました。そこで、より名古屋のお客さんに訴求するためにも、お呼びしたアイドルさんとの良質なハブになるようなグループを制作したいと思ったのが、結成のきっかけです。

── 元々音楽が好きだったんですか?

小林 そうですね。親父が音楽好きだったんですよ。スティーヴィー・ワンダーの「Higher Ground」が家にあったり。お袋もチェッカーズが好きでした。そういうブラックミュージックや歌謡曲などを経て、僕の中で音楽的にミックスされてアウトプットされているのが、フェアラブです。僕自身は、音楽ジャンルでいうとヒップホップが一番好きです。フェアラブの立ち位置も、ヒップホップで例えるとSmoke DZAとかCurren$yみたいな「とにかく自分たちの好きなことをやっている」というような人たちを目指しています。日本で言われている“トレンド”や“流行り”とは少しニアンスが違うのですが、“FRESH”という「現行のものや新しいものがカッコイイ」という意味のヒップホップ用語があります。当時のももクロさんやベビメタさんを見た時に「一番新しいことをやってるのって、“FRESH”なのって、ここだよな」と感じました。だからこそ、「音楽的に今一番自由にできる表現ジャンルってアイドルじゃないか!」って思ったんですよ。


Stevie Wonder – Higher Ground

── ヒップホップグループを作ろうとは思わなかったんですか?

小林 もうやっている所はありましたしね。それよりもメンバーの素材が生きるようなグループの方がやりやすいと感じました。

── メンバーはどのように集めたんですか

小林 名古屋にダンス&ボーカルスクールがあるんですが、その発表会を観に行っていた知人の紹介で、知り合いました。オーディションではなく、スカウトのような形ですね。

── 音楽性やコンセプトはどのように決めましたか?

小林 最初は、大阪で活動していたアイドルグループ・L.u.vさんがちょうど活動休止になって、その楽曲を貸し出して貰う形で2015年9月に結成しました。グループ名はそのL.u.vさんと、レイモンド・チャンドラー原作の映画「さらば愛しき女よ」の原題「Farewell, My Lovely」から名づけました。音楽性については、やっぱりももクロさんとかベビメタさんとかでんぱ組さんとか、アイドルの定義をずらしたようなグループが良いなと考え、そうしたイメージの中で自分がやりやすいと思ったのがジャクソン5だったんです。USアイドルをやれば定義のずらし方として面白いんじゃないかと。それで「ソウル」が最初の音楽的なコンセプトになりました。
 
 
 
律子「お客さんからは『楽曲が良い』と言われることが圧倒的に多いです」


── なるほど。当初は3人のメンバーで始めて、紆余曲折あり、今はメンバーの児玉律子さんと、サポートメンバーのもりきこまる(a.k.a. タイロン・ウッズ)さんの2名体制になっています。今に至るグループの過程をざっくりと教えて貰えますか?

もりきこまる (a.k.a. タイロン・ウッズ)(以下、ウッズ) 最初は中学生2人と小学生1人で始めたんですけど、なんだかんだで今は全員いなくなりました。

小林 オリジナルメンバーの児玉咲子さんが結成から3ヶ月くらいで辞めることになり、お母さんの方から「代わりに妹の方はどうですか?」と紹介されまして。当時は小学4年生だったんですけど、歌も上手いしステージ度胸もあったんで、「是非入って下さい」ということで姉妹が入れ替わりで入って来た、というのが律子さん加入の流れです。

── 律子さんもスクールにいたんですか?

児玉律子(以下、律子) はい、同じスクールにいました。

小林 そこからメンバーチェンジなどありつつ…。
2018年9月に1stワンマンライブを地元の伏見ライオンシアターで開催したんです。ちょうど「gloomy girl 」とか「Good Day」という曲ができた頃で、そこで結構「よっしゃ行くぞ感」というか「受けるかも、行けるかも感」みたいなものを感じたんですよ。ライブをやってもすごい人が集まって来てくれるし。…と思ってたら…、
高校受験でメンバー2人が活動休止になってしまって。そこで休み明けに「よっしゃ行ける」ように準備してたんですけど…、
1人をメジャーに取られてしまいまして。そこからもう一度計画を練り直すことになりました。
で、2019年にウッズさんがサポートメンバーで入ることになり、1st EPを出したんですけど、出した時の反応が良かったんですよ。また「よっしゃ行ける」と思ったんですが、リリースしてすぐメンバーの1人が留学することになり…。
なかなか思うように活動できていない状態で今に至っています。

── とはいえ、アイドル楽曲が好きな人には届いていて、評価もされているという印象はあります。dubblenderというレゲエで有名なレコードレーベルから7inchのレコードも出ましたよね。

小林 あれは「Good day」という曲を出した時にレーベルの方が「レコードを出さないか」と声を掛けてくれたんです。名古屋のレコードショップも協力してくれて、インストアイベントをやらせて頂いたり。ということもあって、届いているのはアイドルファンというより、音楽好きな方たち、という印象はありますね。

律子 お客さんからも「楽曲が良い」ということを言われることの方が、圧倒的に多いですね。楽曲のこと以外でも「律子さん、背高くなったね」とか、親目線の方ばっかりで、「可愛いね」とかはほとんど言われない。

小林 アイドルなら「可愛い」って言われるもんだけどね。

ウッズ 私たち可愛いけどね!
 
 
 
小林「前作がマニアックなテーマだったので、今作は間口を広げたいなと」



FAREWELL, MY L.u.v – GOLD(Spotify)

── では2nd EP「GOLD」についてお聞きします。全体のテーマはどういうものでしょうか?

小林 基本的にフェアラブは、「ブラックミュージックやダンスミュージックをJ-POPに落とし込んで、新たなJ-POPを作る」ということをしているグループなんですが。前回のEPで90年代R&Bみたいなマニアックなテーマでやってしまったので、もうちょっと間口を広げたいなという思いが最初にあったのが、制作の始まりでした。

── レコーディングしてみての感想はどうですか?

律子 ドバドバドバーって一気に録って、「あ、出来たんだ」みたいな。あっという間だった。ほとんどつい最近録りました。

小林 スタートは3月ぐらいで、7月8月に集中的に録りましたね。

── ジャケットアートワークは、アニメーション映画「音楽」、映画「ゾッキ」原作の大橋裕之さんです。

小林 大橋さんの絵が好きだっていうのはもちろんあるんですけど。僕と地元が一緒なんですよ。前作は制作陣を全部愛知県で固めるっていうのが裏テーマとしてあったんですけど。そういう流れで今回もできるだけクリエイターは地元・愛知県の人を優先したいという思いがありました。ディレクションとしては、さっき話した「今回はもうちょっと間口を広げたい」という話をして、あとはもうお任せでした。それで一発目でこのジャケットが上がって来ました。


FAREWELL, MY L.u.v 2nd EP「GOLD」

── ジャケットに書かれている建物は何ですか?

小林 港にある名古屋ポートビルというビルで、ランドマークです。でもちょっと古いんですよ。80年代に革新的な建物として建ったものなんですけど、今の人達はあまり知らなかったりするんです。実はジャケットの裏に金のしゃちほこが描かれてるんですけど、これ金鯱号っていう、しゃちほこの形をしたフェリーなんです。これも2000年で運行が停止になってるんですよ。だからたぶん、大橋さんの中のレトロなイメージで、こうしたイラストを描かれたのかなと思います。そこの答え合わせはしてないですけどね。

── パッと見ではわからないけど、愛知県感のあるジャケットなんですね。

小林 そうですね。「GOLD」というタイトルも、金ピカが好きな名古屋っぽいかなっていうのがあって、つけました。
 
 
 
ウッズ「本当は大学進学を理由にこっそり辞めるはずだったんです」


── 1曲目の「HAPPY LIGHT」、こちらはメインコンポーザーの渡辺泰司さんからの提供曲です。

小林 ウッズさんのソロ曲ですね。

ウッズ 本当は大学進学を理由に今年3月29日のライブでこの曲を歌って、こっそりサポートメンバーを辞めるはずだったんです。でもコロナの影響でライブがなくなり、そのままズルズルと今に至ります。なので歌詞も旅立ちについて書かれています。

小林 ウッズさんへのサポートの感謝を込めて贈った曲ですね。「楽しかったな」と思って貰いたくて、ちょっとセンチメンタルで、でもポジティブなエレクトロポップソングとなっています。リズムありきなトラックに歌謡メロを乗せたため、ちょっとカントリーっぽくも聴こえ、旅立ちの歌にはもってこいだと考えました。

ウッズ 曲自体は、フェアラブ用に作った曲の中から「どれをソロ曲で歌いたいですか」って聞かれて、私が選びました。

小林 ウッズさんが選んだものに更に編曲を加えて仕上げました。

律子 サビに向かうにつれて増えて行く、コーラスの「ぽいぽいぽい」が好きです。

── 2曲目の「染まってゆく」は、元Instant Cytronの松尾宗能さんからの提供曲ですね。

小林 エレクトロ、リゾート、ラヴァーズロック、レゲエ風と、てんこ盛りな雰囲気の楽曲です。福岡に遠征に行ったことで紹介して頂けることになった松尾さんに依頼しました。アルバムとして間口を広げたく、「渋谷系やシティポップといった洒落た音楽の素養のない自分の穴を埋めて貰いたい」と、初顔合わせの場で不躾ながら、お願いしました。あとは「松尾さんの手掛けるラヴァーズロックが好きです」と、ラヴァーズロックという縛りのみでオーダーして。それ以外はお任せでここまで作って下さいました。松尾さん曰く「クレプスキュール(ネオアコ系の先駆け的なベルギーの音楽レーベル)経由のワールドミュージック+ポストパンク+ネオアコ+レゲエのゴッタ煮ソフトロック」だそうです。リファレンスにIsabelle Antenaなどがあるようです。


Isabelle Antena – Mediterranean Songs(Spotify)

── 福岡遠征がきっかけだったんですね。

小林 福岡という自分たちが全然知らない土地にも関わらず、歓迎してくれる人たちが、総数が少ないかもしれないけどちゃんといるっていうところで、僕としても感激だったというか。結構スイッチが入ったんですよね。こういう音楽をやっていると売れるのが難しいところもあるけど、こういう音楽だからこそ、「好きだ」って言ってくれる人に会えたのが、嬉しかったんです。


(※ZOOMにてインタビュー中のメンバー。後方の男性は小林氏)

<後編へ続く>


 
 
■FAREWELL, MY L.u.v 2nd EP「GOLD」

FAREWELL, MY L.u.v「GOLD
発売日:2020年10月28日
価格:2,273円(本体)
品番:FWML-005
形態:CD/配信・ダウンロード
TOWER RECORDS ディストリビューション
Surf Club

ジャケットアートワーク:大橋裕之

1. HAPPY LIGHT
  作詞/作曲/編曲:渡辺泰司
2. 染まってゆく
  作詞:スセンジーナ、松尾宗能
  作曲/編曲:松尾宗能
3. BABY LOVE
  Eddie Holland/Braian Holland/Lamont Herbert Dozier c?JOBETTE MUSIC CO INK.
  編曲/Mix:森俊也
4. obsession
  作詞/作曲/編曲:渡辺泰司
5. GOLD
  作詞/作曲/編曲:渡辺泰司
6. BABY DUB
  Eddie Holland/Braian Holland/Lamont Herbert Dozier c?JOBETTE MUSIC CO INK.
  編曲/Mix:森俊也

〈Bonus track〉
7. REFRAIN
  作詞/作曲/編曲:萩龍一

https://linkco.re/0AQgbumF
 
 
■イベント情報

・2020.11.22 「シティスタイルVol.5」 福岡
・2020.11.22 「福岡箱ライブ予定」 福岡
・2020.11.23 FAREWELL, MY L.u.v 「福岡 ミュージックプラザインドウ インストアライブ」
・2020.11.28 FAREWELL, MY L.u.v 「名古屋市内インストアライブ」
詳細はこちら。
https://idol-bunch.com/luv/index.html
 
 
■FAREWELL, MY L.u.v (フェアウェルマイラブ)

名古屋を中心にライブ活動をしております、中・高生によるガールズダンス&ボーカルグループ。2015年秋ステージデビュー。HIP-HOP的手法でメイン・サブ、様々なカルチャーを取り入れ、Soulをベースに現代風へとアレンジ、ティーンメンバーに合わせた可愛くもダンサブルなオリジナル楽曲で独自のスタイルを確立。名古屋のライブイベント「アイドルバンチ」を中心に、各種ライブイベントやアイドルフェス、メディアへ出演。また自主定期イベント「ABC LESSON」では名古屋で活躍する落語家さん、劇団、ダンサー、ラジオパーソナリティーなどを講師に招き、公開授業形式の独自イベントも行っております。
2016年暮れに1stシングル「7 DAYS FOCUS」を発売。2017年12月、2nd「NAGOYA ZOO」リリース。
2019年6月1stEPをリリース。
名古屋には無かった、コンセプチュアルで楽曲重視の姿勢と、握手をはじめとする接触を排し、ファンとの適切な距離間を保つクリーンなイメージ、ソウルフィーリング溢れるオリジナル曲で、地元名古屋だけでなく、全国的に注目を集め、東京など県外での公演・ゲスト出演が増加しております。

Official Site(https://idol-bunch.com/#luv
Twitter(https://twitter.com/farewellmyl_u_v
Instagram(https://www.instagram.com/farewellmyluv/
YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCfGc9UOSkYF2nWlCrZAalaw
ONLINE SHOP(https://farewellmylu.theshop.jp/




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