※「うぶモード 2013年2月号」の連載コラム「プチモード」の転載記事です。
全員が選りすぐりの美少女!
「おーはー!」の挨拶で知られる、平日早朝に帯で放送されているキッズバラエティ番組『おはスタ』。98年4月から続くこの人気番組のイメージガールは「おはガール」と呼ばれ、過去にベッキー、蒼井優、平井理央など、数々の有名女性タレントを輩出している。また、おはガールを担当するのは中高生の美少女であるため、ジュニアアイドル好きにとってもマスト視聴な番組として知られている。
そんなおはガールだが、ここ数年はアイドルファンの間で話題に上ることも減り、本来のターゲットであるキッズ層には訴求しつつも、”アイドル”としては低調な印象だった。しかし今年度の『おはガールちゅ!ちゅ!ちゅ!』に関しては、久しぶりにアイドル好きの間で話題となることが増えて来ているようだ。
では一体、どのような理由でちゅちゅちゅが評価されているのだろうか。まずは同グループのメンバーの紹介から始めて行こう。リーダーをつとめるなつみこと岡本夏美は14歳の中学2年生で、イメージカラーは水色、立ち位置は向かって左。バーニング系のモデル系事務所・エヴァーグリーンに所属し、ジュニアファッション誌『ニコラ』(新潮社)の専属モデルとしても活躍している。ゆうなこと平祐奈は14歳の中学2年生で、イメージカラーは桃色、立ち位置はセンター。ケイダッシュ系の事務所・ピーチに所属し、姉は平愛梨だ。ひなここと吉川日菜子は13歳の中学1年生で、イメージカラーは橙色、立ち位置は向かって右。劇団ひまわり所属で、過去に子役としてテレビドラマに出演したりと芸歴は長い。現在は休業中だが、同事務所のアイドルグループ・Oh☆Campeeのメンバーでもある。
そんな3人なのだが、とにかくルックスの良さが際立って良い。同一の事務所でグループを仕掛ける場合、「全員が全員美少女」という訳にはいかないことが多い。しかしちゅちゅちゅの場合は事務所の大小問わず選りすぐりの美少女を集めた、という風に見える。このセレクションは、99年度のおはガールシトラス(末永遥、安藤盟、酒井彩名、谷口紗耶香、倉沢桃子)や、01年度のおはガールグレープ(川田由起奈、笹岡莉紗、あびる優、芳賀優里亜、内田莉紗)のバランスの良さを彷彿とさせる。2010、11年度はハロプロのメンバーが所属していたためどうしてもハロプロ色が濃くなっていた。だからこそ今年度は「かつてのおはガールが帰って来た感」が強まっているのだ。
ライブアイドルブームに乗っかった初のおはガ
さらにテレ東発ながら、積極的にグループアイドルブームに乗っかっていることも、今までのおはガとは一線を画す特徴の1つだろう。TOKYO IDOL FESTIVALやアイドル横丁祭りなどの対バンライブに出演したり、CDのリリースイベントを乱発したりと、大人のファンが乗っかれる展開をしっかりと用意してくれている。「朝会えるアイドル」をキャッチコピーに掲げていることからも、今のシーンに参加していることに意識的であることが受け取れる。
そしてなんといっても、ちゅちゅちゅは楽曲のクオリティが、アイドルポップスとして非常に高いレベルであることが、アイドルファンを引きつける大きな要因となっている。TIFでも披露した8月発売のデビュー曲『もっと ぎゅっと ハート』も優れたアイドルポップスだったが、アイドルファンの間でグループの評価をぐっと高めたのは、11月に発売された『こいしょ!!!』だろう。サウンドプロデュースに元JUDY AND MARYのTAKUYAを、振り付けに振付稼業air:manを迎えたこの曲は、冒頭のユルイアイドルラップに始まり、サビでの内股でジャンプする振り付けや、メンバーのキュートな歌声が交錯するボーカルラインなど、聴きどころと見どころが盛りだくさん。アイドル好きで知られるタワーレコード嶺脇社長も自身の連載で「アイドルソングとしては完壁な域ですね」と絶賛している。今年リリースされたアイドルポップスの中でも大きなインパクトを残した傑作と言っていいだろう。
AKB48、ももいろクローバーZと、ライブアイドルが主体となった現在のアイドルシーンだが、しかしながらブレイクに至るためには地上波のテレビ番組に露出を続ける必要がある状況は、依然として続いている。そんな中、ちゅちゅちゅは『おはスタ』という知名度の高い番組のレギュラーを持ち、ライブ出演も頻繁に行っている。「テレビ+現場」の状況が予め整っていることは、他のグループと比べてもかなり高いアドバンテージを持つこととなる。アイドルファン層に訴求する意味でも、「在宅」と「現場」の両輪で楽しめる環境であることは、大きな武器となるだろう。
とはいえおはガールは基本的に年度ごとにメンバーが卒業するものであるため、今の恵まれた状況は期限付きだ。大ブレイクも見込めない。しかし逆にそれがさくら学院的な「今しかない」という刹那的な雰囲気を生んでいて、魅力としてプラスに機能している。
アイドルブームの中で変質し、輝きを取り戻した今年度のおはガール「ちゅちゅちゅ」。引き続き、その活動に注目して行きたい。
文:岡島紳士
転載元:「うぶモード 2013年2月号」の連載コラム「プチモード 第2回」より。